ベトナムは「中堅人材」が不足している――なぜ次世代リーダーが育たないのか

Japanese ArticlesAugust 04, 2026 15:00

Bar chart showing hardest-to-fill roles in Vietnam 2026

 

ベトナムは「中堅人材」が不足している――なぜ次世代リーダーが育たないのか

著者:Valerie Ong(リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ)

ベトナムでは毎年、多くの優秀な若手人材が育っています。しかしその上の層、つまり現場を支える中間管理職や経験豊富な専門人材の育成という点では、まだ大きな課題を抱えています。「Vietnam Employer Hiring Study 2026」の調査結果の中でも、特に深刻な課題として浮かび上がってきたテーマです。

採用担当者の39%が、中間管理職の不足を採用上の最大の課題として挙げています。採用が難しいのは新卒・若手ではありません。経験を積んだ専門職、すなわち製造エンジニア(35%)・営業・事業開発(35%)・工場監督者(33%)・IT/AIスペシャリスト(31%)といった層です。

なぜ中堅人材が不足しているのか

中間管理職の不足は、ベトナムにとって新しい問題ではありません。しかし、事業の成長が加速し、経験豊富な人材への需要が供給を上回り続ける中で、その深刻さは増しています。

ベトナムでは毎年多くの優秀な若手人材が社会に送り出されています。しかし優秀な若手を、組織を支える管理職やリーダーへと育成する仕組みには、まだ構造的な隔たりがあります。その背景には、いくつかの要因があります。

  • 体系的なリーダー育成への投資が不足している:正式なプログラムを持たず、現場での経験頼みになっている企業が多い

  • 若手人材の転職が活発である:十分な経験を積む前に職場を変えてしまうため、中間管理職として魅力的な人材になりきれない

  • 経験者をめぐる競争が激しい:外資系企業が限られた中間管理職の人材を奪い合っている

  • 中間管理職の給与水準が上昇している:需要が供給を上回り続けた結果、経験者の給与期待値が急騰している

なぜシニア人材より中間管理職が重要なのか

人材戦略においてシニアリーダーの採用に目を向けがちな企業は少なくありません。しかし実際に戦略を形にするのは、中間管理職です。生産ラインを動かす製造エンジニア、顧客との関係を築く営業マネージャー、事業計画を現場の結果に変える工場監督者。この層がいなければ、組織は機能しません。

この層が薄くなると、その影響は上にも下にも波及します。シニアリーダーは現場の細かい対応に追われ、若手社員には頼れる先輩がいなくなり、プロジェクトは滞り、成長目標は達成できなくなります。

長期的に見れば、外部採用に頼るだけでなく、社内育成へ投資することが企業の競争力につながります。

中間管理職不足に対処するための3つの戦略

1. 今すぐ優秀な若手を見極める

中間管理職の不足を解消する最も効果的な方法は、必要になる前に人材の育成を始めることです。リーダーシップの素質・事業感覚・しっかりとした技術的な基礎を持つ若手社員を今のうちに見極め、育成に投資し始めましょう。

18〜24か月の体系的な育成プログラムがあれば、中間管理職としての準備を大幅に加速できます。2026年から始めれば、中間管理職不足がさらに深刻化すると予測される2027〜2028年には、社内の人材育成の仕組みが整っているはずです。

2. 昇進の道筋を見える化する

採用担当者の20%が、キャリアパスへの期待を定着リスクの主な要因として挙げています。つまり優秀な人材が、先が見えないという理由で会社を離れているのです。昇進の基準が明確で、一貫して運用される昇進制度は、定着率向上に最も効果的な手段の一つでありながら、導入にほとんどコストがかかりません。

3. 外部採用には専門採用会社と組む

社内育成だけでは間に合わない場合、自社の業界に深いネットワークを持つ専門採用会社と組むことで、中間管理職の採用にかかる時間を大幅に短縮できます。重要なのは、求める人物像や職務内容を、最初の段階で具体的に共有することです。 汎用的な求人票を渡すのではなく、職務要件の詳細・社風・現実的なスケジュールをしっかり共有しましょう。

Reeracoenがこれまでベトナムの製造業・IT・営業・金融分野で支援してきた中堅・上位職の採用実績から見えてきたのは、うまくいく採用には共通点があるということです。依頼の段階で時間をかけて丁寧に情報を共有している、良い候補者が出たら迷わず素早く動く、そして現在の市場実態に即した給与水準を把握している。この3つが揃っている企業は、採用の成功率が明らかに高いのです。

長期的な視点で考える

中間管理職の不足は、すぐには解消されません。この課題をうまく乗り越えられるのは、中間管理職の育成を人事部門だけの課題ではなく、経営課題として捉えている企業です。

2026年、その違いは企業の競争力として着実に表れ始めています。

 

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よくある質問

Q1. ベトナムにおける「中堅人材の不足」とは何ですか?
 ベトナムの労働市場における、経験豊富な専門職の構造的な不足のことです。優秀な若手人材は育っていますが、管理職・監督者・技術専門家としての能力を持つ人材は、需要に対して大幅に不足しています。

Q2. 2026年のベトナムで最も採用が難しい中間管理職はどの職種ですか?

 製造エンジニア(35%)・営業・事業開発(35%)・工場監督者・生産リーダー(33%)・IT/AIスペシャリスト(31%)です。これらの職種は、若手からすぐに育てられるものではなく、相応の実務経験と専門的な能力が求められます。

Q3. なぜベトナムでは中間管理職の確保がこれほど難しいのですか?

 体系的なリーダー育成への投資不足・経験を積む前に転職してしまう若手層の流動性の高さ・外資系企業を中心とした人材獲得競争・そして給与水準の急騰によって、経験者を採用できない企業が増えていることが主な要因です。

Q4. 社内で中間管理職の人材を育てるには、どのくらいの時間がかかりますか?

 ベトナム各地の企業を支援してきたReeracoenの経験では、ポテンシャルの高い若手社員が中間管理職として活躍できるレベルになるまでの育成期間は、18〜24か月程度が目安です。

Q5. 中間管理職不足に今すぐ取り組むには何をすべきですか?

 優秀な若手社員を見極めて体系的な育成プログラムを始める・昇進基準を明確にする・経験者の給与水準を市場と照らし合わせる・自社の業界に深いネットワークを持つ専門採用会社と連携する。まずはこうした取り組みから始めてみましょう。

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 著者プロフィール

Valerie Ong

リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ

Valerie Ongは東南アジア全域でReeracoenのコンテンツ制作と市場調査を統括しています。専門採用コンサルタントと密に連携しながら、採用データや給与水準、労働市場のトレンドを分析し、企業や求職者に役立つ実践的な情報として発信しています。年次給与ガイド・採用レポート・採用担当者調査など、Reeracoenの独自調査をもとにした情報発信を行っています。

言語について:本記事は英語で公開されています。Reeracoenでは、専門人材コミュニティ向けに一部のコンテンツをベトナム語・日本語でも提供しています。

参考資料

1. Reeracoen Vietnam. (2026). Vietnam Employer Hiring Study 2026.

2. Reeracoen Vietnam. (2026). Vietnam Employers Are Hiring More in 2026 - But Struggling to Compete for the Talent They Need.

3. Reeracoen Vietnam. (2025). Succession Planning in 2025: Building a Future-Ready Workforce in Vietnam.

 

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