採用が鈍化しているときこそ、企業ブランドの発信をやめてはいけない――ベトナムで「見え続けること」の重要性

採用が鈍化しているときこそ、企業ブランドの発信をやめてはいけない――ベトナムで「見え続けること」の重要性
2026年を迎えたベトナムでは、多くの企業が採用に慎重な姿勢をとっています。予算の見直し、人員増加の鈍化、稟議や承認に時間がかかるようになったことを背景に、求人掲載を減らしたり、採用活動を一時停止したりする企業も出てきました。
こうした時期には、採用広報(employer branding)の優先度が下がりがちです。しかしベトナム国内の市場データや採用実績が一貫して示しているのは、その逆です。採用が落ち着いているときこそ、企業ブランドの発信はより重要になります。
採用が鈍っている時期も地道に発信を続けた企業ほど、再開後の動き出しが早く、人材の質も高く、採用コストも結果的に低くなっています。
本記事では、採用が鈍化している時期でも企業ブランドの発信が重要な理由、優れた企業が実践していること、そして予算をかけすぎずに将来の人材確保につなげる方法をお伝えします。
採用は波があっても、人材をめぐる競争は消えない
ベトナムの労働市場は景気に左右されやすく、採用の波が繰り返されます。世界的な需要の変動・輸出の浮き沈み・資金の流れといった外部要因が、特に以下の分野の採用活動に直接影響します。
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製造業・エンジニアリング
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テクノロジー・ITサービス
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サプライチェーン・物流
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間接部門・管理機能
ベトナム統計総局のデータによると、経済調整期には雇用の伸びが鈍化する一方、人材不足は解消されません。採用数は減っても、優秀な人材の奪い合いはむしろ厳しくなります。
アジア太平洋地域の調査では、採用再開後に人材確保に苦労したと答えた企業が65%以上に上ります。採用が鈍化した時期に存在感を失い、候補者との関係が途切れてしまっていたのが主な理由です。
ベトナムの若い働き手は転職に積極的で、応募する前からじっくりと企業を見ています。それだけに、この課題はより深刻です。
採用広報は「求人を出すこと」ではない
「採用広報は求人を出しているときだけ必要」という思い込みが、よくあります。しかし実際には、採用広報は次のようなことに影響しています。
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求職者が自社に親しみや信頼を持てるかどうか
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いざ採用を再開したとき、どれだけ早く人材が集まるか
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候補者が期待する給与水準と、交渉の進みやすさ
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内定を出したときの承諾率
LinkedIn Talent Insightsによると、候補者の70%以上が応募前に数週間から数か月かけて企業を調べています。採用が落ち着いている時期に発信をやめてしまうと、いざというときに候補者の記憶から薄れてしまいます。
発信をやめると何が起きるか
ベトナム国内の採用データでは、採用広報を止めた際に次のような問題が繰り返し起きています。
1. 人材候補の流出 候補者は積極的に応募していない時期も、企業を評価し続けています。発信が止まると「不安定な会社」「関心のない会社」と見なされ、発信を続ける競合他社に人材が流れていきます。
2. 採用再開後の時間とコストの増大 存在感を保っていなかった企業は、採用再開時に急いで人材を探すことになり、空席期間が長引いたり、十分な検討ができないまま採用を決めたりするリスクが高まります。
3. 給与交渉での不利 存在感の薄い企業や発信の少ない企業は、候補者から「リスクが高い」と判断されやすく、その不安を補うために高い報酬を求められることがあります。
4. 内定辞退の増加 関わりが薄く、よく知らない会社からの内定は、候補者に受け入れてもらいにくくなります。
採用力の強い企業がベトナムで実践していること
採用再開後に素早く立て直せる企業は、発信をやめるのではなく、内容を切り替えています。
量より中身を重視する 頻繁な求人掲載の代わりに、次のような発信に力を入れます。
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経営陣やHRからの業界への見解や考え方
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企業文化・価値観・職場の安定性
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スキル開発や研修への投資
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事業の方向性についての率直な情報発信
候補者との関係を維持する 求人が少ない時期でも、次のような取り組みを続けます。
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LinkedInや自社サイトの定期的な更新
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社員のエピソードや節目となる出来事の発信
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採用ペースについての誠実な情報発信
地域のHR調査によると、採用が落ち着いている時期も企業ブランドの発信を続けた企業は、ゼロから再スタートした企業と比べて将来の採用コストを最大30%削減できています。
ベトナムでは「安定している企業」かどうかを、候補者はよく見ている
ベトナムで働く人、特に中堅層や管理職候補は、企業が本当に安定しているか、誠実に向き合っているか、細かいところまでよく見ています。
候補者が注目していること :
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企業からの一貫した発信
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社員の成長や定着の実績
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経営陣の明確な方向性
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責任ある人材マネジメントの姿勢
ベトナムを対象にした採用会社の調査では、候補者の60%以上が「採用が鈍化していても、安定感と透明性を感じられる企業を好む」と回答しています。
費用をかけずにできる採用広報の取り組み
採用広報に大きな予算は必要ありません。
効果的でコストを抑えた取り組みの例:
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採用動向や市場への見解を発信する
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社内昇進や長く活躍する社員を紹介する
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学習・研修・社員の成長や学びの取り組みを共有する
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過度な約束をせずに、今後の採用方針を明確に伝える
こうした継続的な発信が信頼をつくり、いざ転職を考えたときに真っ先に思い浮かべてもらえる会社になれます。
採用が落ち着いているときこそ、採用パートナーが力を発揮する
多くのベトナム企業は、人材が必要になって初めて採用会社に声をかけます。しかし、採用が落ち着いている時期から採用パートナーと関係を築いておくと、次のようなことが可能になります。
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目立たずに市場での存在感を保てる
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候補者の本音や給与の相場感をつかめる
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将来の採用に備えて、人材候補をあらかじめ絞り込んでおける
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情報発信を適切に管理しながら、企業としての評判を守れる
業界データによると、ベトナムの中堅・管理職以上の採用では70%以上のケースで採用会社が関与しており、採用に慎重な時期ほどその割合が高くなる傾向があります。
採用広報は単発の取り組みではなく、育てていく財産
採用広報の効果は、じわじわと積み重なっていくものです。今日発信した内容が、半年後・一年後に応募してくる人材に影響を与えています。
採用広報を「そのときだけの取り組み」ではなく「育てていく財産」として捉えている企業には、次のような強みがあります。
- 人材が必要になったとき、より早く動き出せる
- より優秀な人材を集め、長く活躍してもらえる
- 給与を無理に引き上げなくても、他社と渡り合える
- 市場が不安定なときでも、候補者からの信頼を保てる
変化を続けるベトナムの労働市場において、「見え続けること」とは声を張り上げることではありません。日々の一貫した発信、伝わりやすいメッセージ、そして積み重ねた信頼――その三つが土台になります。
よくある質問
Q1. 採用が鈍化している時期でも採用広報に投資すべきですか?
はい。採用が落ち着いている時期の発信は、将来の採用にかかる時間・コスト・候補者の不安を減らします。
Q2. 採用広報は大企業だけに関係する話ですか?
いいえ。即戦力人材を求めるベトナムの中小企業こそ、明確な企業ブランドの発信から大きな恩恵を受けられます。
Q3. ベトナムでの採用広報に効果的な手段・媒体はどこですか?
自社ウェブサイト・LinkedIn・採用会社のネットワーク・信頼性の高い採用会社が特に重要な役割を果たします。
Q4. 採用広報は定着率にも効果がありますか?
はい。自社への誇りや信頼を高め、不安定な時期の離職を抑える効果があります。
Q5. 採用広報の効果はいつ頃から採用結果に表れますか?
候補者の行動は応募の数か月前から採用広報の影響を受けています。早い段階から継続して発信することが重要です。
ベトナムで採用ブランドを強化したい企業様へ
Reeracoenは、採用が落ち着いている時期も含めて、採用広報・人材市場の調査・戦略的な採用支援をご提供しています。
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✅著者プロフィール
- 著者:Valerie Ong(リージョナルマーケティングマネージャー)
- 発行:Reeracoen Vietnam ― APACを代表する採用エージェンシー
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📚 参考資料
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Vietnam General Statistics Office (Labour & Employment Data)
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LinkedIn Talent Insights (Vietnam & APAC)
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World Economic Forum, Future of Jobs Reports
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Reeracoen Vietnam hiring observations and employer insights

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