産休・育休だけじゃない――2026年、ベトナムで本当の意味で働きやすい職場を実現するには

Japanese ArticlesJuly 30, 2026 11:00

Diverse team of Vietnamese professionals in a meeting room including women in leadership roles

 

産休・育休だけじゃない――2026年、ベトナムで本当の意味で働きやすい職場を実現するには

著者:Valerie Ong(リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ)

 

ベトナムは東南アジアの中でも女性の就業率が特に高く、全年齢層で一貫して70%を超えています。それにもかかわらず、Reeracoenの「採用担当者調査 2025〜2026」と「Beyond the Paycheque 2026」調査では、女性専門職が期待する「インクルーシブな職場環境」と、多くの外資系企業が実際に提供できている環境との間には、依然として大きなギャップがありました。

これは制度の問題だけではありません。多くの外資系企業には、産休・育休の制度・同一賃金方針・差別禁止の規定がすでに整っています。問題は、その運用・職場文化・そして優秀な女性社員が「ここで働き続けたい」「さらにキャリアを築きたい」「周囲の人にも勧めたい」と思えるかどうかを左右する、具体的な職場の在り方にあります。本記事では、その具体的な取り組みと、大きなコストをかけずに実践する方法をご紹介します。

データが示す現実

Reeracoenの2026年調査では、ベトナムの外資系企業全体で一貫したパターンが浮かび上がりました。経験年数5〜15年の中堅・上位層の女性専門職は、男性の同職と比べて柔軟な働き方を理由に離職する割合が高く、上司との関係性やキャリアアップの機会を理由に定着する傾向があります。

この層でよく挙がる離職のきっかけ:

  • 産休・育休後の復職における柔軟な対応の欠如(過去3年以内に産休・育休を取得した中堅・上位層の女性回答者の34%が回答)

  • 組織の上位職に女性のロールモデルが見当たらない(29%)

  • 妊娠・出産前後からキャリアが止まったと感じる(27%)

  • 上司からの明確なサポートなしに、家庭の事情と仕事のスケジュールが合わない(41%)

本当の意味での「働きやすい職場」とは何か

産休・育休後の復職を柔軟にする

ベトナムの労働法では、多くの職種で6か月の産休が認められています。この復職のタイミングは、単なる事務手続きではなく、定着を左右する重要な場面です。最初の4〜8週間は時短勤務、最初の3か月はフレックス勤務といった段階的な復職を認めている企業は、即日フルタイム復帰を求める企業と比べて、産休・育休後の定着率が高い傾向にあります。これは大きなコストの話ではありません。スケジュールの調整と、管理職の柔軟な対応があれば実現できます。

管理職に「インクルーシブな組織づくり」の責任を持たせる

制度だけあって運用されなければ、絵に描いた餅です。インクルージョン(包括性)の実現において成果を出している外資系企業は、管理職を業績だけでなく、チームの多様性と定着率でも評価しています。複雑なDEI(多様性・公平性・包括性)推進プログラムは必要ありません。管理職の人事評価に、「優秀な女性社員の定着・活躍を支えること」を評価項目として組み込むだけでも十分です。

助言だけでなく、昇進やキャリア形成を後押しする支援も重要

キャリア形成を支援する方法には、大きく2つあります。1つは、経験や知識をもとに助言や相談を行う支援です。もう1つは、本人がいない場でも昇進候補として推薦したり、重要なプロジェクトへの参加を後押ししたりする支援です。この2つには異なる役割があります。
将来有望な中堅・上位層の女性社員に対し、こうした昇進やキャリア形成を後押しする支援まで行っている外資系企業では、助言や相談を中心とした支援だけを実施している企業と比べて、定着率・昇進率ともに高い傾向が見られます。

会議の進め方を見直す

ベトナムの外資系企業でよく見られるにもかかわらず、見過ごされがちな問題の一つが、会議での無意識のバイアスです。男女混合の職場環境において、女性は発言を遮られやすく、アイデアの功績を正当に評価されにくく、非公式な意思決定の場から外されやすいことが、調査で一貫して示されています。こうした傾向を自覚し、会議での発言機会を意図的に設け、誰のアイデアかを明確にする習慣を持つ管理職がいる職場は、研修だけで対応しようとする職場より早く文化が変わっています。

これはビジネス上の優位性にもなる

インクルージョンの評判が高い外資系企業は、優秀な女性候補者を集めやすく、上位管理職の採用期間を短縮でき、既存社員からの質の高い紹介も増える傾向があります。採用担当者の80.3%が人材確保を最大の課題として挙げている市場において、これは実質的な競争優位性です。
最も重要なシグナルは、上位職に占める女性の割合です。部門長や役員などの上位職に女性が目に見える形で存在している組織を見た候補者は、「自分もこの会社でキャリアを築ける」と感じます。どれほど魅力的な採用メッセージを発信するよりも、実際に女性が上位職で活躍している姿の方が、将来有望な女性候補者にとって、より大きな説得力を持ちます。

よくある質問

Q1. ベトナムにはジェンダー平等に関する法的な要件がありますか?

あります。ベトナムのジェンダー平等法と労働法では、採用・報酬・昇進における性別による差別を禁じています。従業員1,000人以上の企業には、ジェンダー平等に関する取り組みについて報告する義務があります。法令遵守に加え、海外の親会社からも、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みの一環として、現地法人レベルでのDEIに関する報告を求める動きが強まっています。

Q2. 小さな子どもを持つ社員から柔軟な働き方を求められた場合、どう対応すればいいですか?

管理職の裁量で個別対応するのではなく、チーム全体に一貫して適用される明確な書面上のルールを設けることが大切です。管理職ごとの個別対応は、法的リスクと職場の不公平感の両方を生みます。効果的な制度は、コアタイム・連絡の取りやすさ・最低限の出社日数といった枠組みを定めつつ、その中で本当の意味での柔軟性を認めるものです。上司との関係が良く、自ら積極的に希望を伝えられる社員だけが恩恵を受けるような非公式な対応は、職場の不満につながります。

Q3. 大きなHR部門がなくても、インクルージョンの成果を測ることはできますか?

できます。まずは3つの指標から始めましょう。職位レベル別・性別の定着率、職位レベル別・性別の昇進率、そして上位2職位に占める女性の割合。年に一度測定するだけで十分です。同じ職位レベルで、女性の定着率・昇進率が男性より低い場合、そこに取り組むべき課題があります。この測定結果を見える形で経営チームと共有すること自体が、専任のDEI担当者を置かなくても、組織としての責任感を生み出します

 

 

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著者プロフィール

Valerie Ong

リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ

Valerie Ongは東南アジア全域でReeracoenのコンテンツ制作と市場調査を統括しています。専門採用コンサルタントと密に連携しながら、採用データ・給与水準・労働市場のトレンドを、企業と求職者にとって実践的な情報に落とし込んでいます。年次給与ガイド・採用レポート・採用担当者調査など、Reeracoenの独自調査をもとにした情報発信を行っています。

言語について:本記事は英語で公開されています。Reeracoen Vietnamでは、バイリンガル・日本語話者コミュニティ向けに一部のコンテンツをベトナム語・日本語でも提供しています。

 

参考資料

  1. Reeracoen Salary Guide 2025–2026

  2. Vietnam Law on Gender Equality 2006 (amended)

  3. Vietnam Labour Code 2019, Chapter X: Female Workers

 

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