なぜベトナムでは日本語対応ができるエンジニア・経理財務人材の採用が難しいのか――採用成功につながる方法とは

Japanese ArticlesAugust 13, 2026 15:21

Japanese-speaking Vietnamese professional leading a cross-cultural meeting

なぜベトナムでは日本語対応ができるエンジニア・経理財務人材の採用が難しいのか――採用成功につながる方法とは

著者:Valerie Ong(リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ)

Reeracoenの「Hiring Manager Survey 2025–2026」では、日本語対応が可能なバイリンガル人材のポジションが、職種や役職のレベルを問わず、一貫して採用が難しいポジションとして上位に挙げられています。

その背景には、構造的な人材不足があります。ベトナムの日系企業市場の成長に対して、日本語と専門スキルの両方を備えた人材の供給が追いついておらず、一時的な採用難ではなく、慢性的な人材不足が続く状況となっています。

本記事では、なぜ特にエンジニアと経理・財務のポジションで採用難が深刻なのか、企業の採用活動で起こりがちな問題、そして実際に採用につながりやすい方法について解説します。

 

なぜこの2つの職種は採用が難しいのか

エンジニア:専門スキルと日本語力の両方が求められる

日本語対応ができるエンジニアが少ないのは、求められる条件が2つあるためです。

エンジニアとして4〜5年の専門教育を受けた上で、N2〜N1レベルの日本語を身につけるには、さらに3〜5年程度の学習が必要です。

ベトナムでは、毎年多くのエンジニアが大学を卒業し、日本語学校からもN3〜N2レベルの人材が数多く輩出されています。

しかし、エンジニアとしての専門性と、十分な日本語力の両方を備えた人材となると、その数は限られており、企業間の採用競争も激しくなっています。

特に需要が高いのは、以下のようなポジションです。

・生産技術エンジニア(N3〜N2以上)

・品質管理マネージャー(N2)

・日本人顧客対応のテクニカルコーディネーター(N2〜N1)

・日本語対応が可能な工場・プラントマネージャー(N1が望ましい)

 

経理・財務:信頼性が重視されるポジション

ベトナムの日系企業では、財務情報や税務関連業務、日本本社への報告など、機密性の高い業務を担当するポジションに日本語対応が可能な人材を求めるケースが多くあります。

こうした業務では、専門的なスキルだけでなく、正確な情報共有や日本本社との円滑なコミュニケーションも求められるため、日本語対応が可能な人材が優先される傾向があります。

その結果、もともと限られている人材層から、さらに候補者が絞られることになります。

特に需要が高いのは、以下のようなポジションです。

・経理マネージャー(N2〜N1)

・日本語での報告が可能なファイナンシャルコントローラー

・クロスボーダーでの報告業務に対応できる内部監査担当者

・日本の会計基準(Japanese GAAP)に関する知識を持つ税務コンプライアンス担当者

 

採用でよくある3つの失敗

1. 理想の人材が現れるのを待つ

N2レベルの日本語力、製造業でのエンジニア経験8年、さらに親会社とのやり取りができる十分な英語力をすべて備えた人材は存在します。

ただし、こうした人材には月3〜4件の採用オファーやスカウトが届いており、すでに他社で働いている可能性が高いでしょう。こうした人材が自然に応募してくるのを待っているだけでは、採用は進みません。

重要なのは、「理想の人材」ではなく、「最低限必要な条件」を明確にすることです。

入社1年目から成果を出すために絶対に必要な条件は何か。一方で、入社後に身につけてもらえるスキルは何か。ここを整理することが重要です。

例えば、日本語力がN3でも専門性の高いエンジニアであれば、日本語学習を企業側が支援することで、十分に戦力化できるケースがあります。希少なN2人材を探し続けるよりも、日本語力の向上を支援したほうが、採用コストに対する効果が高い場合もあります。

 

2. 市場競争力のない給与を提示する

日本語対応が可能な人材には、同等の専門職と比べて10〜30%程度高い給与水準が求められる傾向があります。

Reeracoenの「Salary Guide 2025–2026」によると、製造業で5〜8年程度の経験を持つ中堅レベルの日本語対応エンジニアは、月給3,500万〜6,000万VNDが市場の目安となっています。同程度の経験を持ち、N2レベルの日本語力を備えた経理・財務マネージャーは、月給4,000万〜7,000万VNDが目安です。

一般的な専門職と同じ給与水準で採用しようとすると、最終的なオファーの段階で候補者を失う可能性があります。

 

3. 日本語人材コミュニティへの企業の魅力発信が不足している

ベトナムの日本語人材コミュニティは規模が限られている一方、横のつながりが強く、どの企業が魅力的な勤務先なのかという情報も共有されています。

日本語での情報発信、コミュニティイベントへの参加、バイリンガル人材の育成への継続的な投資などを通じて、このコミュニティの中で企業としての評判を高めることが重要です。こうした取り組みは、社員からの紹介や、転職活動を積極的に行っていない人材との接点につながります。求人サイトだけに頼る企業では出会いにくい候補者にアプローチできる可能性があります。

 

採用につながりやすい4つの方法

日本語人材に強い専門エージェントを活用する
日本語対応が可能な人材に特化した採用会社と連携し、既存の候補者ネットワークにアクセスすることが有効です。
一般的な求人サイトだけでは、日本語と専門スキルの両方を備えた人材の一部にしかアプローチできません。信頼関係のある採用会社からの直接的なアプローチによって、より幅広い候補者に接点を持てる可能性があります。

日本語力の向上を支援する
社内や周囲のネットワークから、将来的に活躍が期待できるN3レベルのエンジニアや経理・財務人材を見つけ、N2取得に向けた学習を支援する方法もあります。JLPT対策講座の費用は、日本語スキルによる市場価値の差と比較すれば、大きな負担ではありません。採用市場で希少な人材を探し続けるだけでなく、企業側で人材を育成することも有効な選択肢です。

日本語スキルに対する手当を明確に設定する
日本語スキルに対する手当を基本給に含めるのではなく、独立した手当として明確に設定することも有効です。日本語力という具体的なスキルを企業が評価していることが伝わりやすくなり、社員にとっても、語学力を維持・向上させるための明確な動機になります。

日本語でのオンボーディング環境を整える
日本語対応が可能な人材が早期に戦力として活躍できるよう、日本語での業務マニュアル、研修資料、コミュニケーションテンプレートなどを整備しましょう。こうした環境は、新しく入社した社員が早く業務に慣れることを助けるだけでなく、日本語を活用する企業文化が実際に存在することを示すことにもつながります。

 

よくある質問

Q1. 実際に必要なJLPTレベルはどの程度ですか?

ポジションによって異なります。
日本語を使って日常的に日本人とコミュニケーションを取るポジションであれば、多くの企業にとってN2が実務上の最低ラインとなります。日本語の使用が補助的で、書類の読解や時々の連絡・調整が中心であれば、N3でも対応できるケースがあります。一方、東京の本社へのプレゼンテーションや契約交渉など、重要度の高いコミュニケーションを担う管理職では、N1が望ましいでしょう。「N2必須」と一律に設定するのではなく、そのポジションで実際にどの程度の日本語力が必要なのかを明確にすることが重要です。

Q2. 日本での就学・就業経験があるベトナム人材を採用するのは有効ですか?

はい。有力な人材層の一つですが、まだ十分に活用されていません。日本で学んだ経験や働いた経験のあるベトナム人材は、N2〜N1レベルの日本語力を持つケースが多く、日本のビジネス文化を直接経験していることも強みです。また、その経験をベトナムの日系FDI企業で生かしたいという意欲を持つ人材もいます。こうした人材は、ベトナムの一般的な求人サイトでは必ずしも見つけやすいとは限りません。日本語人材に特化した採用会社を活用することで、この人材層にアプローチしやすくなります。

Q3. 日本語対応が必要なエンジニア職の採用には、通常どのくらいの期間がかかりますか?

専門の採用会社と連携した場合、ベトナムで中堅〜シニアレベルの日本語対応エンジニア・経理財務職を採用する場合、求人内容の確認からオファー受諾まで、現実的な目安は6〜8週間です。シニアレベルのポジションでは、10〜12週間程度かかる場合があります。一般的な専門職と比べると長い期間が必要になるため、人員計画にもあらかじめ採用期間を織り込んでおくことが重要です。事業上の必要時期から逆算し、できるだけ早く採用活動を始めることをおすすめします。

 

ベトナムで日本語人材の採用をお考えの企業様へ
Reeracoen Vietnamでは、エンジニア、経理・財務、管理職などのポジションを中心に、日本語対応が可能な人材やバイリンガル人材の採用をサポートしています。日本語人材の採用について、ぜひReeracoen Vietnamの専門コンサルタントにご相談ください。

 

Reeracoen Vietnamの
コンサルタントに相談する

給与ガイド 2025–2026を

ダウンロードする

 

著者プロフィール

Valerie Ong

リージョナルマーケティングマネージャー、Reeracoenグループ

Valerie Ongは東南アジア全域でReeracoenのコンテンツ制作と市場調査を統括しています。Reeracoenの専門採用コンサルタントと連携し、採用データ、給与水準、労働市場のトレンドを、企業やビジネスパーソンに役立つ実践的な情報として発信しています。年次給与ガイド、Hiring Pulse、Hiring Manager Surveyなど、Reeracoen独自の調査をもとに、採用市場に関する情報を発信しています。

言語について:本記事は英語で公開されています。Reeracoen Vietnamでは、日本語・ベトナム語を使用するビジネスパーソンや専門人材に向けて、一部の記事を日本語・ベトナム語でも提供しています。

 

参考資料

  1. REERACOEN VIETNAM EMPLOYER HIRING STUDY 2026

  2. Reeracoen Salary Guide 2025–2026

  3. Reeracoen JLPT Ultimate Guide to Working in a Japanese Company 2026

  4. Reeracoen Hiring Pulse Q1 2026

 

Disclaimer
本ブログの記事は、一般的な情報提供のみを目的としており、専門的なアドバイスの代わりとなるものではありません。情報の正確性と最新性の維持に努めていますが、内容は時間の経過とともに古くなったり、正確性を欠いたりする場合があります。特定の事項についてアドバイスや指針が必要な場合は、それぞれの分野の専門家にご相談ください。本ブログの記事に基づいて行われたいかなる判断についても、読者自身の責任において行うものとします。それにより生じた損失、損害、不利益について、当社は一切の責任を負いません。また、参考情報として外部サイトやリソースへのリンクを掲載する場合がありますが、これらは利便性のために提供するものであり、リンク先の内容や正確性を保証・推薦するものではありません。記事には著者個人の意見、見解、解釈が含まれる場合があり、必ずしも組織全体の見解を反映するものではありません。記事の内容については、正確性や適切性をご自身でご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。本ウェブサイトおよびそのコンテンツをご利用いただくことで、本免責事項に同意したものとみなします。