「無申告休暇」「必要最低限労働」と従業員の燃え尽き症候群～ベトナム企業での事例と対応策～

ベトナムの職場は急速に変化しており、従業員の働き方や職場への関わり方も多様化しています。近年、世界的に注目される「Ghost Vacations（無申告休暇）」や「Silent Quitting（静かな退職）」が、ベトナムでも見られるようになってきました。加えて、過労や燃え尽き症候群（バーンアウト）の増加は、企業にとって目に見えにくい大きなコストとなっています。

対策を講じないままでは、生産性や士気の低下、離職率の上昇につながります。しかし、適切な対応を行えば、これらの警告サインを組織改善のチャンスに変えることも可能です。

 

Ghost Vacations（無申告休暇）とSilent Quitting（静かな退職）とは？

Ghost Vacations（無申告休暇）

従業員が正式に休暇を申請せずに休む一方で、あたかも働いているかのように振る舞う状態です。在宅でログインだけする、納期を遅らせる、返信を遅くするなどの行動が見られます。多くの場合、疲労や職場への関心低下への対処法として行われます。

Silent Quitting（静かな退職）

2023年頃から注目されるようになった概念で、職務内容の最低限だけをこなし、それ以上の努力や積極的な関与を避ける状態を指します。怠けているわけではなく、仕事の境界線を守りたい、あるいは不満がある場合に起こります。
どちらも共通して示す問題は、従業員の燃え尽き症候群や職場への関心低下です。

ベトナムにおける燃え尽き症候群の現状

急速な経済成長により、ベトナムの労働者にはかつてない負荷がかかっています。

• 業務量のプレッシャー：2025年のベトナム商工会議所（VCCI）調査によると、57％の人事担当者が燃え尽き症候群を従業員定着の最大の課題に挙げています。

• 世代ごとのストレス：現在、労働力の約30％を占めるZ世代は、特にテクノロジーやサービス業で最も高い職場ストレスを報告しています。

• アジア地域との比較：Gallupの「State of the Global Workplace 2024」によると、アジアの従業員の40％以上が毎日職場でストレスを感じています。ベトナムも同様の傾向にあります。

企業への影響

燃え尽き症候群や無申告休暇、静かな退職は目に見えにくい現象ですが、実際には次のような影響があります。

• 生産性の低下：世界的な研究では、従業員1人あたり最大34％の生産性低下が起こるとされています。

• 離職率の上昇：ストレスを感じている従業員は、1年以内に離職する確率が2.6倍高いと報告されています（Gallup）。

• 企業イメージへの影響：静かな退職が広がると、採用候補者から「社員がやる気を失っている会社」と見なされ、採用活動に悪影響が出ます。

ベトナム企業が取るべき対策

休暇制度の透明化

無申告での休暇ではなく、正式な休暇を取得できる環境を整えましょう。経営陣自身も率先して休暇を取ることが大切です。

業務量と残業の管理

HRデータを活用して過剰な残業の傾向を把握します。繁忙期には部署ごとの業務負荷をローテーションするなど、特定部署の慢性的な過重労働を避けます。

柔軟な働き方の導入

ハイブリッド勤務（在宅と出社を組み合わせた勤務形態）、フレックスタイム、週4日勤務などを活用し、日々のストレスを軽減しつつ生産性を維持します。

オープンなコミュニケーションの促進

業務負荷や不満を安心して相談できる場を作ります。マネージャーには早期に従業員の関心低下を察知し、サポートできるよう教育します。

適切な評価と報酬

静かな退職は「評価されていない」という感覚から生まれることもあります。評価制度の整備やキャリア開発、競争力のある給与で従業員のモチベーションを高めましょう。

 

よくある質問：ベトナムにおける燃え尽きと職場トレンド

Q1：なぜ無申告休暇が発生する？

業務量が多く、正式な休暇も取りにくい雰囲気があるため、従業員が非公式に休む「無申告休暇」を取る傾向があります。

Q2：燃え尽き症候群はどのくらい一般的？

調査によると、従業員の半数以上が燃え尽き症状を経験しており、特に若手が影響を受けやすいとされています。

Q3：「無申告休暇」と「静かな退職」は同じ？

いいえ。静かな退職は長期的な関与の低下、無申告休暇は短期的な回避行動です。ただし、どちらも職場の文化的・構造的な問題を示すサインです。

Q4：企業がまず取るべき行動は？

まず現状を正面から認識し、業務量の管理、柔軟な働き方、メンタルヘルスサポートなど、データに基づいた対策を実施します。

まとめ：隠れた兆候を可視化して改善へ

無申告休暇や静かな退職は一時的な流行ではなく、従業員が過度な負荷を抱えている警告サインです。ベトナムの企業にとって、燃え尽き症候群への対応は、生産性の維持、優秀な人材の確保、持続的成長のために不可欠です。従業員の働きやすさを重視した環境を作ることで、やる気の低下を防ぎ、組織の活力を取り戻せます。